~俺は幸せだ。ふとそう思った。
こんな小さくて汚い子猫でも、
こいつらは僕と一緒にしっかり生きている、
暮らしている。
三十代半ばになろうとして
自分にもやっと家族が出来た…そう思った~
『猫の神様』 (講談社文庫)
兄弟猫と一人の男の「命のドラマ」…希代の文章家、東良美季によるノンフィクション小説。
~彼が死んだのは、
暖かい春の陽射しが差し込む、
穏やかな朝だった。
十年と八ヶ月一緒に暮らしたというのに、
それはとてもあっけないお別れだった……
ぎじゅ太が死んでからというもの、
僕は毎日を呆然と過ごした。
僕の薄い膜の中に入って来れるのは
みャ太だけだった……
こいつは長生きするだろう。
これから先、
ずっと長い間可愛がって、
二人仲良く暮らしていけるはずだ。
でもそうはならなかった。
おそらくこの時すでに、
彼の身体の中では異変が起こっていたのだ。~
『猫の神様』 (講談社文庫)
514円